インボイス制度は本当に始まるの?廃止になる可能性について解説

2023/5/13

インボイス制度は本当に始まるの?廃止になる可能性について解説

取引と消費税を取り巻くインボイス制度は、その対応の難しさや小規模事業者からは制度に反対する声も多く上がっています。そこで「インボイス制度は本当に始まるの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。

結論、インボイス制度は本当に始まります。現状から一転して、廃止となることは考えにくいでしょう。しかし、インボイス制度の実施によって、不利な状況になってしまう人が数多くいるのも事実です。

この記事では、インボイス制度が廃止される可能性について解説します。反対意見やインボイス制度によって苦しい状況にある人々の実例も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

そもそもインボイス制度についてよくわかっていない方は、先に以下の記事を読んでおくと、理解しやすくなります。こちらもぜひ参考にしてください。

https://about.monect.jp/blog/86.html#i-10

インボイス制度が廃止になる可能性は低い

インボイス制度は、2023年10月から実施されます。反対意見も数多くあるインボイス制度ですが、廃止されることは考えにくいでしょう。

その理由は、以下の2点が挙げられます。

  • インボイス制度の実施は国会で可決済み
  • すでに対応している事業者も多数

インボイス制度の実施は国会で可決済み

インボイス制度の実施は、国会ですでに可決されています。制度が開始されるのは2023年10月からですが、導入自体は2016年の時点で決定済みです。当時は世間の注目も少なく、反対意見もあまりありませんでした。すでに決まった法令を覆すのは難しく、インボイス制度が中止となるのは現時点では考えにくいでしょう。

すでに対応している事業者も多数

すでに対応している事業者が多くいることも、インボイス制度が中止となる可能性が低い理由のひとつです。インボイス制度に対応するためには、免税事業者は課税事業者へと転換し、適格請求書(インボイス)を発行できるようにしなくてはなりません。さらに、インボイス制度に対応するためのレジの改修や、インボイス関連書類を発行できるソフトやツールなどの導入を行っている事業者も少なくないでしょう。

これらの時間やコストを考えると、インボイス制度の中止は対応した事業者から大きな反感を買うと予想されます。

 

インボイス制度が廃止されると言われている理由

インボイス制度には、以下のような問題点があります。

  • 免税事業者の負担が激増する
  • 業務やコストが増える
  • インボイス制度に反対する声が多数上がっている

免税事業者の負担が激増する

インボイス制度でもっとも問題視されているのは、免税事業者の負担が大きくなってしまうことです。

インボイス制度が開始されると、売上にかかる消費税と仕入にかかった消費税の差額分のみの納税が認められる控除(仕入税額控除)を受けるために、適格請求書(インボイス)という専用の書類が必要になります。インボイスを発行できるのは課税対象の事業者のみであり、免税事業者のままだとインボイスを発行できません。

そのため、免税事業者と取引する場合は課税事業者も仕入税額控除を受けることができないのです。免税事業者との取引を避けたいと考える課税事業者も多いため、免税事業者からすれば課税事業者への転換を余儀なくされてしまいます。

もともと、免税事業者の区分が生まれたのは消費税の負担を減らすためでした。しかしインボイス制度の実施が開始されると、課税対象になるか取引面での不利を受け入れるかの選択を迫られます。どちらの選択をしても、苦しい状況となることに変わりはありません。

このように、立場の弱い小規模な事業者が、かなり不利な状況になってしまうことがインボイス制度の大きな問題点です。

業務負担が増える

インボイス制度に対応するために、業務上の負担が大きくなることも問題のひとつです。インボイス制度が始まったからといって、請求書の取り扱いがインボイスのみになるわけではありません。それぞれの請求書で対応が異なるため、課税事業者は適切な処理や保管をする必要があります。

加えて、インボイスの発行や仕入税額控除を受けるための計算など、新しく会計システムを導入することも考えなくてはなりません。これらの対応にコストがかかることも事業者の負担となります。

インボイス制度に反対する声が多数上がっている

上記のような問題点から、インボイス制度の実施に反対の声も多いです。

インボイス制度に反対している主な勢力として、以下の5政党が挙げられます。

  • 立憲民主党
  • 国民民主党
  • 社会民主党
  • 日本共産党
  • れいわ新撰組

インボイス制度は、特に民間の事業者へ与える影響が甚大な法改正です。大きな影響の一例として、現役声優の3割弱が、インボイス制度の実施を機に廃業を検討しているとされています。

特にこれまで免税事業者として活動してきた事業者は、税金の負担を受け入れるか、それとも免税事業者のまま、取引先との関係が不利になることを受け入れるかの選択を迫られることになるでしょう。

これらの問題点から、「インボイス制度は廃止すべき」という意見が生まれました。「インボイス制度は廃止される可能性がある」と解釈をしてしまう人もいるでしょう。残念ながら、インボイス制度の実施は決定事項であり、今後廃止や延期などの処置が取られることは考えにくいです。

ただし、インボイス制度によって生活が激変しないよう、経過措置や補助制度が導入されています。次の項目でインボイス制度の経過措置や支援制度について解説しているので、当面の対応の参考にしてください。

 

インボイス制度の経過措置・支援制度

インボイス制度には、経過措置や支援制度が設けられています。ゆくゆくは完全にインボイス制度に移行しますが、それまでは急激な変化に対応するため、猶予期間が決められているのです。

インボイス制度の経過措置・支援制度には以下のものがあります。

  • 実施後6年間は控除を受けられる
  • 納税額を売上税額の2割にする減税処置
  • 補助金制度
  • 小額取引・少額の値下げや返品は適格返還請求書が不要

実施後6年間は控除を受けられる

インボイス制度が実施されても、その後6年間は経過措置が設けられています。

経過措置は、3年ごとに免税事業者との取引の仕入税額控除の控除額が小さくなっていきます。

 

  • インボイス制度の実施から3年間:免税事業者からの仕入でも80%控除可能
  • その後3年間:免税事業者からの仕入でも50%控除可能

 

インボイス制度の実施から6年後、つまり2029年の10月からは完全に移行します。6年間の猶予のうちに、準備を進めておきましょう。

納税額が売上税額の2割に軽減

インボイス制度のために免税事業者から課税事業者に転換した場合、納税額を本来納める税額の2割に軽減する特例が設けられています。

課税転換をすると、これまで支払っていなかった消費税がかかります。そのため、急激な負担増に苦戦する事業者も少なくないでしょう。このような状況への緩和措置として、消費税の納税額を軽減する措置も用意されているのです。

補助金制度

免税事業者が課税転換をした場合、持続化給付金の支給上限が一律で50万円加算される措置も設けられています。

対象となるのは小規模事業者のみで、税理士への相談やシステム開発などにかかった費用の3分の2まで補助を受けられます。

さらに、IT導入補助金のうち、安価な会計ソフトを導入したときの補助金について下限が撤廃されました。ITツールやPC・タブレットなどが対象となります。それぞれの補助率は以下の通りです

  • ITツール :50万円まで(補助率3/4以内)
  • ITツール :50~350万円(補助率2/3以内) ※下限額を撤廃
  • PC・タブレット等:10万円まで(補助率1/2以内) 
  • レジ・券売機等 20万円まで(補助率1/2以内)

少額取引は適格請求書が不要

中小事業者向けの緩和措置として、1万円に満たない課税仕入の場合は適格請求書が不要になります。免税・課税に関係なく、小額な取引の場合はインボイスを発行しなくても仕入税額控除を受けられます。

なお、こちらも経過措置の一種であり、対象となる期間は2029年の10月までです。インボイス制度の実施後すぐは、こちらの制度を活用しましょう。ただし、完全に移行する前に課税転換などの対応を進めておく必要もあります。

また、少額の値引きや返品については、インボイスの交付は必要ありません。こちらはインボイス制度の実施後も期限なく対象となります。

 

インボイス制度に対応するメリット

インボイス制度に対応すると、以下のようなメリットを得られます。

  • 業務を効率化できる
  • 取引継続・新規開拓の心配がなくなる

業務を効率化できる

インボイス制度の施行とほぼ同時期に、電子帳簿保存法の法改正も行われます。どちらも電子データによる書類の保存や送付を認める法律であり、紙の書類から電子化への動きが進んでいくでしょう。

電子データでインボイスを発行すれば、システムを利用して仕入税額控除の計算や請求書の保存を簡単に行うことができます。煩雑化しがちな書類業務を効率化し、会社全体での業務負担が減らせるのは大きなメリットです。

取引継続・新規開拓の心配がなくなる

インボイス制度に対応すれば、取引先と今後の取引について交渉する必要がなくなります。免税事業者のままだと仕入税額控除を受けられないことを理由に、取引を中止されてしまう可能性も少なくありません。これまでの顧客と取引を継続できれば、新しく取引先を探す心配もなくなるでしょう。

取引についての心配ごとは、課税転換をしてしまえば解消できるものがほとんどです。しかし、課税対象となれば納税義務を負うことになるので、よく考えて対応を決めるようにしましょう。

 

インボイス制度への対応にお困りの方はmonectの無料セミナーへ

インボイス制度に対応し、仕入税額控除を受けるためには、取引先との連携が重要となります。特に建設業の場合は元請や下請などの関係にあることが多いため、取引先が免税事業者との取引をどうするのか、または免税事業者の取引先は課税事業者への移行をするのかなどを確認しておきましょう。

建設業の場合、インボイス制度で対応が迫られているのは下請業者だけではありません。元請の立場にある業者も、正しく対応していないと損をしてしまうかもしれません。しかし「具体的に何をどうすればいいのかわからない」という方も少なくないでしょう。

そのような方は、ぜひ弊社の無料セミナーをご活用ください。元請業者がインボイス制度に関してどのような対応を取れば良いのか、わかりやすく解説します。30分で終了するので、今後の対応でお困りの方、少しでも法改正の知識を深めたい方は参加してみましょう。

 

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