建設業法の改正&取適法の施行で 工務店・リフォーム会社はどう変わる?建築業はどっちの法律が対象になるの?

2026/3/3

建設業法の改正&取適法の施行で 工務店・リフォーム会社はどう変わる?建築業はどっちの法律が対象になるの?

1. はじめに――なぜ今、2つの法律を同時に押さえる必要があるのか

2025年〜2026年にかけて、建設業に関わる2つの法律が相次いで施行されました。

1つは「建設業法等の改正」(2025年12月12日 全面施行)、もう1つは「取適法(中小受託取引適正化法)」(2026年1月1日 施行)です。

これらは別々の法律ですが、現場では「どちらのルールを守ればいいのか」「自分の会社は対象なのか」と混乱している経営者も少なくありません。

このブログでは、工務店・リフォーム会社の経営者・担当者が押さえておくべきポイントを、実務目線で整理して解説します。難しい法律用語を避け、「自社にとって何が変わるのか」を軸にお伝えします。

 

2. 2つの法律、何がいつ施行されたのか?

まず混乱を避けるために、2つの法律の「名前・中身・施行日」を整理しましょう。

 

建設業法等の改正 取適法(中小受託取引適正化法)
正式名称 建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(旧:下請法)
施行日 2025年12月12日(全面施行) 2026年1月1日
所管省庁 国土交通省 公正取引委員会・中小企業庁
主な目的 建設業の担い手確保・処遇改善・働き方改革 下請・委託取引の公正化・中小事業者の保護強化

 

◆ ポイント:2つは別々の法律です。ただし「建設業者だから取適法は関係ない」は誤りです。取引の種類によっては両方が関わります。

 

3. 「工事請負」か「それ以外の委託」かで適用される法律が変わる

建設業法が適用されるケース(=工事請負)

建設工事そのものの請負契約は、建設業法の規律が優先されます。取適法(旧・下請法)は適用されません。

  • 元請から下請への工事発注(内装・水回り・電気工事 など)
  • リフォーム工事の一部を協力会社に依頼する場合

 

取適法が適用される可能性があるケース(=工事以外の委託)

建設業者であっても、「工事以外の委託取引」は取適法の対象になります。

  • 設計事務所への設計図・図面作成の委託
  • 測量会社・BIMデータ作成会社への業務委託
  • 資材の製造・加工を外部業者に委託する場合
  • 配送・運搬を外部業者に依頼する場合

 

取引の種類 適用される法律 具体例
工事の請負 建設業法 下請業者への内装工事発注
設計・図面の委託 取適法 設計会社への設計図作成委託
資材の製造委託 取適法 建具・家具の製造外注
運搬・配送の委託 取適法 資材運搬を運送会社に依頼

 

◆ 迷ったら「工事を完成させる契約なのか、成果物・役務を納品する契約なのか」を確認してください。前者は建設業法、後者は取適法が関わります。

 

4. 建設業法改正で変わる3つの実務ポイント

2025年12月12日に全面施行された改正建設業法では、工務店・リフォーム会社に直結する変更が3つあります。

 

① 著しく低い労務費での見積・契約が禁止に

中央建設業審議会が定める「標準的な労務費の基準」を著しく下回る見積もりを依頼すること、またはそのような見積もりを提出することが禁止されました。

これは「元請 → 下請」だけでなく、「施主 → 元請」の関係にも適用されます。

  • 値引き要求によって労務費をゼロ同然にするような見積書の作成・提示は違反
  • 違反した場合、国土交通大臣から勧告・公表される可能性あり

 

② 原価割れ契約の受注も禁止(受注者側も対象)

これまでは「不当に低い請負代金を強制してはいけない」という発注者側の義務でしたが、今回の改正では受注者側も総価での原価割れ契約を受注してはいけないことが明確化されました。

「受注するためなら赤字でも仕方ない」という慣行が法的リスクになります。

  • 施工原価を割った契約の締結が受注者にも禁止
  • 適正利益を確保した見積もりの作成が義務化される方向

 

③ 不当に短い工期の設定が禁止(発注者・受注者ともに)

中央建設業審議会が定める工期の基準に照らして「著しく短い工期」での請負契約を結ぶことが、発注者・受注者の双方に禁止されました。

「施主から短工期を要求された」というだけで受け入れてしまうと、受注者側も法的リスクを負います。

  • 短工期の要求があった場合は協議を行い、記録を残すことが重要
  • 無理な工期を「飲み込む」ことが法的リスクに直結

 

5. 取適法(旧・下請法)で工務店が気をつけるべき場面

「建設業だから下請法は関係ない」と思っていた方は注意が必要です。2026年1月から施行された取適法は、建設工事の請負には適用されませんが、工事以外の委託取引には適用される場合があります。

 

取適法の主な義務と禁止事項

取適法では、親事業者(発注側)に以下の義務が課されます。

  • 発注内容を記した書面(注文書)を交付する義務
  • 下請代金を受領後60日以内に支払う義務
  • 下請代金の支払遅延の禁止
  • 一方的な代金減額の禁止
  • 正当な理由のない受領拒否の禁止

 

工務店・リフォーム会社が特に注意すべきケース

設計事務所や測量会社への業務委託、資材メーカーへの製造委託、運送会社への配送委託などが該当します。

例えば「設計変更があったから設計フィーを値引いてほしい」「資材代を後から天引きする」といった慣行が、取適法違反になる可能性があります。

 

◆ 「うちは施工会社だから発注する立場にはない」は誤りです。設計や資材調達で他社に委託している場合は、その発注行為に取適法が適用されます。

 

6. 協力会社・外注先との契約を今すぐ見直すべき理由

今回の法改正で最も実務に影響が大きいのが、協力会社・外注先との契約まわりです。以下の3点を中心に早急に見直すことをお勧めします。

 

① 書面発行の徹底(口頭発注の廃止)

建設業法第19条では、工事の発注には書面交付が義務付けられています。また取適法でも、委託取引には注文書の交付が求められます。

「いつもの付き合いだから口頭で」という慣習は、法的リスクの温床になっています。すべての発注について書面(または電子書面)を発行する体制を整えましょう。

 

② 支払条件の見直し

取適法では、委託代金は成果物・役務の受領後60日以内に支払うことが義務付けられています。自社の支払サイトが60日を超えていないか確認が必要です。

また、建設業法の改正により、労務費相当分の支払いについても適正水準が求められます。「協力金」「安全会費」などの名目で一方的に天引きする慣行は要注意です。

 

③ 価格交渉の記録化

資材高騰や工期変更が生じた場合、その経緯と交渉内容を書面で記録しておくことが重要です。改正建設業法では、資材高騰に備えた請負金額の変更方法を契約書に明記することが求められています。

口頭での合意だけで進めてしまうと、後からトラブルになるリスクが高まります。

 

7. 今後の対応ロードマップ――経営者がやるべきことリスト

法改正への対応は、一度に全てを整備しようとすると負荷が大きくなります。優先度の高いものから順番に手をつけていきましょう。

 

【今すぐ対応】緊急度:高

  • 協力会社への発注書面の整備(口頭発注の廃止)
  • 支払サイトの確認(60日ルールへの適合)
  • 協力金・安全会費などの天引き慣行の見直し

 

【1〜3ヶ月以内に対応】緊急度:中

  • 見積書の労務費・材料費の内訳明示(「外注一式」表記の見直し)
  • 資材高騰時の価格変更に関する契約条項の追加
  • 施工原価の把握体制の強化(原価割れ防止)
  • 工期設定の根拠を記録・保管する仕組みの構築

 

【3ヶ月〜6ヶ月以内に対応】緊急度:低

  • 契約書テンプレートの全面見直し(建設業法19条の記載事項確認)
  • 設計・測量等の外注委託における注文書フローの整備
  • 書類・契約書の電子化による管理効率化

 

◆ monectは、建設業の元請・下請間の書類を電子化し、発注書・請求書のやり取りをデジタルで完結できるサービスです。書面発行の義務化への対応や、協力会社との取引記録の管理にお役立てください。

 

まとめ

建設業法の改正(2025年12月)と取適法の施行(2026年1月)は、工務店・リフォーム会社の実務に大きな影響を与える法改正です。

特に重要なポイントを改めて整理します。

 

  • 工事請負は建設業法、それ以外の委託は取適法が適用される場合がある
  • 著しく低い労務費・原価割れ契約・不当な短工期が発注者・受注者ともに禁止に
  • 設計・測量・資材製造などの外注委託には取適法のルールが適用される
  • 協力会社との契約は「書面化・支払条件・価格交渉の記録」の3点が急務

 

「自社は対象外」「今まで問題なかった」という判断は危険です。法改正を機に、取引の見直しと書類管理の整備を進めていきましょう。

 

(本記事の内容は2026年3月時点の情報に基づいています。法律の解釈については専門家にご相談ください。)