リフォーム会社や工務店が、安全協力会費や振込手数料を協力会社負担にするのは 法改正によってどうなる?

2026/3/3

リフォーム会社や工務店が、安全協力会費や振込手数料を協力会社負担にするのは 法改正によってどうなる?

1. はじめに――「いつもの慣習」が今、問われている

リフォーム会社・工務店では、協力会社(下請・外注)への支払い時に、安全協力会費や振込手数料を差し引いて(いわゆる「赤伝処理」で)支払うことが、長年の慣習として行われてきました。

ところが近年、立て続けに関連法が整備され、「これって問題になるの?」と不安を感じている経営者・担当者も多いのではないでしょうか。

結論を先にお伝えすると、こうなります。

 

◆ 本記事の結論

① 建設業法の改正:直接的な禁止規定はないが、以前から問題行為とされており、監視が強化された

② 取適法(旧・下請法):工事請負には適用されないため、直接の禁止規定はない

③ フリーランス保護法:一人親方への発注において、安全協力会費・振込手数料の天引きは明確な違反リスクあり

 

本記事では、これら3つの法律がそれぞれ何を規定しているのかを整理し、実務でどう対応すべきかを解説します。

 

2. そもそも「安全協力会費」「振込手数料の負担」とは何か

安全協力会費(赤伝処理)とは

安全協力会費とは、現場の安全管理や事故防止活動を目的として、元請が協力会社から徴収する費用です。請負代金の一定割合(0.1〜数%)を差し引く「定率型」や、月額一定額を引く「定額型」があります。

元請が安全大会・パトロール・教育研修などを実施する費用に充てるために設けられており、建設業では広く普及した慣習です。

 

振込手数料の協力会社負担とは

代金を振り込む際の銀行振込手数料(数百円〜数千円)を、元請が負担せず、受取側の協力会社に負担させる慣行です。支払額から振込手数料分を差し引いた金額を振り込む方式が代表的です。

 

⚠ 問題になりやすいのは「一方的な天引き」

双方の合意なく、請求金額から勝手に差し引かれることが問題です。「長年の取引だから」「口頭で了承していたから」では不十分になってきています。

 

3. 建設業法の観点:改正前から「問題行為」だった

まず、今回の建設業法改正(2025年12月12日 全面施行)では、安全協力会費や振込手数料の天引きを直接禁止する条文は追加されていません。

ただし、改正前から国土交通省の「建設業法令遵守ガイドライン」において、こうした赤伝処理については厳格な要件が定められていました。

 

ガイドラインが求める「適正な赤伝処理」の条件

  • 元請と下請の双方が協議・合意していること
  • 見積条件や契約書面に赤伝処理の内容・算定根拠を明示していること
  • 差引額が下請に過剰な負担とならないよう配慮していること
  • 費用の収支を下請に開示し、透明性を確保していること

 

これらの条件を満たさずに一方的に差し引く行為は、建設業法第28条第1項第2号の「請負契約に関する不誠実な行為」に該当し、国土交通大臣から指示処分を受けるリスクがあります。

 

◆ 今回の改正で何が変わった?

「建設Gメン」による立入調査・監視体制が強化され、こうした不適正な赤伝処理が発覚するリスクが高まっています。

「今まで問題にならなかったから大丈夫」という判断は、今後通用しなくなります。

 

4. 取適法(旧・下請法)の観点:工事請負には不適用

2026年1月1日に施行された取適法(中小受託取引適正化法)は、下請法を改正・拡充したものです。旧・下請法では振込手数料の天引きについて明確な規定があり、「書面で合意していない場合の天引きは下請代金の減額に当たる」とされていました。

しかし建設工事の請負契約は、取適法の適用対象外です。理由はシンプルで、建設工事は「建設業法」という別の法律で規制されているためです。

 

取適法(旧・下請法) 建設業法
建設工事の請負 適用されない 適用される
設計・図面作成の委託 適用される可能性あり 適用されない
一人親方への発注 規模要件を満たせば適用 フリーランス保護法が別途適用

 

したがって、協力会社(下請)への工事請負発注において、安全協力会費や振込手数料を差し引く行為は、取適法による直接の制裁対象にはなりません。

ただし次章で説明するフリーランス保護法の問題があるため、「取適法が適用されないから問題ない」とは言い切れません。

 

5. フリーランス保護法の観点:一人親方への発注は要注意

ここが本記事の核心です。2024年11月1日に施行されたフリーランス保護法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、下請法・取適法と異なり、業種の制限がありません。

つまり、建設工事の請負契約であっても適用されます。

 

フリーランス保護法が適用される「相手方」

保護対象(特定受託事業者)は以下の通りです。

  • 従業員を使用しない個人事業主(=いわゆる「一人親方」)
  • 役員・従業員のいない一人社長法人(代表者1名のみの法人)

 

⚠ 重要:適用は「一人親方への発注」に限定

従業員を1人でも雇っている法人の協力会社への発注には、フリーランス保護法は適用されません。

ただし建設業では、協力会社の中に一人親方が多く含まれるため、実務上の影響は大きいです。

 

安全協力会費の天引きは「不当な経済上の利益の提供要請」に該当

フリーランス保護法第5条第2項第1号は、「自己のために金銭その他の経済上の利益を不当に提供させること」を禁じています。

具体的には、「協賛金」「協力金」「安全協力会費」といった名目で、報酬の支払いとは別に金銭の提供を求める行為がこれに該当します。

 

◆ 法律の条文(要旨)

フリーランス保護法第5条第2項第1号:特定業務委託事業者は、特定受託事業者の利益を不当に害することとなるような、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることをしてはならない。

(公正取引委員会・牛島総合法律事務所解説より)

 

振込手数料の天引きは「報酬の減額」に該当

フリーランス保護法第5条第1項第2号は、「特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく報酬を減額すること」を禁じています。

振込手数料を差し引いて支払う行為は、この「報酬の減額」に該当します。事前に書面で合意があったとしても、一人親方側に帰責事由がない状態での減額は禁止対象になります。

 

慣行 該当する禁止条項 適用される相手方
安全協力会費の天引き 不当な経済上の利益の提供要請の禁止(5条2項1号) 一人親方・一人社長法人のみ
振込手数料の協力会社負担 報酬の減額の禁止(5条1項2号) 一人親方・一人社長法人のみ

 

適用されるのは「1か月以上の継続的業務委託」

上記の禁止規定が適用されるのは、業務委託の期間が1か月以上の継続的な取引の場合です。

しかし、建設業では協力会社との取引が継続的に行われるケースがほとんどであり、実態上は多くの取引が対象に含まれます。

 

6. 実務対応:今すぐ確認すべきこと

以上を踏まえ、リフォーム会社・工務店が今すぐ確認・対応すべきことを整理します。

 

① 協力会社に一人親方がいるかを確認する

自社が発注している協力会社の中に、個人事業主(一人親方)や一人社長の法人が含まれているかを確認しましょう。含まれている場合、フリーランス保護法の規制対象になります。

 

② 一人親方への安全協力会費の徴収を見直す

一人親方から安全協力会費を差し引いている場合、フリーランス保護法違反のリスクが生じます。

  • 対応策A:安全協力会費の徴収を廃止し、元請が全額負担する
  • 対応策B:安全協力会費を廃止し、請負金額に安全管理費を明示的に含める形に変更する

 

③ 一人親方への振込手数料負担を廃止する

振込手数料を協力会社負担にしている場合も、一人親方が相手であればフリーランス保護法違反のリスクがあります。

振込手数料は元請が負担するか、振込手数料込みの金額で取引条件を整備することを検討しましょう。

 

④ 従業員を雇っている法人の協力会社との取引

従業員がいる法人協力会社への発注については、フリーランス保護法の適用はありません。ただし建設業法のガイドラインに基づく要件(合意・書面化・透明性の確保)は引き続き適用されます。

 

取引の相手方 安全協力会費 振込手数料負担 根拠法律
一人親方・一人社長法人 ❌ 違反リスクあり ❌ 違反リスクあり フリーランス保護法
従業員ありの法人 ⚠ 合意・書面化が必要 ⚠ 合意・書面化が必要 建設業法ガイドライン

 

まとめ

安全協力会費や振込手数料の協力会社負担という慣行は、長年「業界の当たり前」として続いてきました。しかし法整備が進む中で、そのリスクは確実に高まっています。

 

  • 建設業法の改正で「建設Gメン」による監視が強化。以前から問題とされていた一方的な赤伝処理が見つかりやすくなった
  • 取適法(旧・下請法)は工事請負には適用されないが、「だから問題ない」とは言えない
  • フリーランス保護法(2024年11月施行)により、一人親方への安全協力会費・振込手数料の天引きは明確な違反リスクがある
  • まず自社の協力会社に一人親方がいるかを確認し、いる場合は取引条件の見直しが急務

 

「長年やってきた慣習だから大丈夫」という時代は終わりつつあります。協力会社との信頼関係を守るためにも、今こそ取引条件の整備を進めましょう。

 

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(本記事の内容は2026年3月時点の情報に基づいています。法律の解釈・適用については、個別の事情により異なる場合があります。具体的な対応は専門家にご相談ください。)